2007年07月18日

めずらしい男子

高校3年生のK君。この地域では有数の進学校の生徒である彼は、最後まで部活をやりぬき、ようやく最近になって受験に本腰を入れるようになった。
もともとデキがいいのか、僕のうるさい文法議論にもついてくるようになった。
最近の男子学生は大きく2通りに分かれる。明るいか暗いかだ。後者は表情すらなく、何を考えているかさっぱり読めない。誘い笑いにも反応せず、顔面括約筋が退化してしまったかのようだ。

K君は前者だ。
明るいのをさらに2つに分ける。ハキハキした好青年か、女にもてることしか考えない歩く精子だ。

K君は前者だ。体育会でしっかり鍛えた背筋をピンと伸ばし、はっきり人の目を見て話す。当たり前だけど、そんな高校生は、少なくともウチでは珍しい部類に入る。

ウチの個別指導は、一つ一つコンパートメントで仕切られているわけではなく、普通のサイズの教室でめいめいがワイワイやる。
隣近所の声なんか丸聞こえだ。

彼には僕が作った『ムズ文テクスト』ってのを渡してある。これはいつだったか暇に任せて、構文が複雑な文ばかり集めたものだ。ある程度文法が分かっている人にしか渡さない。そうでなければ英語嫌いになってしまうからだ。

先週、彼のデキはとてもひどかった。
予習も適当だし、時間かけて文法的に推論すべきところを単純に質問してきた。

「志望校に入れるかどうかというようなチンケな問題じゃない。問題に臨み、こんな半端なところで退却するんなら、今すぐ金玉切って捨てろ。」

みんなに聞こえるのを承知で、ややきついことを言った。

同じ場所に、K君と同じ学校の2年生がいた。
隅々までオシャレして、ミニスカートで、話し方もわざと頼りなげなトーンを作る、よくあるタイプの「かわいい」女子だ。
教室の隅で、驚いたような顔をしてこっちを見ていた。目が合うと、泣きそうな顔になった。

K君に惚れてんのかな? と思った。

今日、1週間ぶりにK君をみると、先週とは別人のようなすばらしい予習っぷりだった。
完答には程遠いが、今の彼なら上出来だ。

僕は彼を讃えた。寿いだ。みんなに聞こえてしまうがかまわないと思った。

先週と同じ場所に例の女子がいて、また目が合った。すごくうれしそうな顔で笑っていた。
僕も笑顔を返し、軽く「よっ」みたいな挨拶をした。
K君はそれに気づき、彼女と目が合った。彼女はすばやくペコッと頭を下げた。

K君はあごをヒョイっとしゃくっただけですぐに英文に向き直った。

僕は机の上の紙に「冷たいな」と書いた。
K君は「女うざいっす」と返した。

おお…

そうなんだ。男はある時期女が嫌いになるもんだ。猫もシャクシも女にもてたいみたいに言うけれど、あれはなんというか、空気を読んでそう言ってるだけなんじゃないのかな。社交界の掟というか。めんどくさいけど、まあもてたいって言っておけば無難だし、みたいな。

もてたいかぁ?素朴すぎるけど、そう思う。
僕は付き合いは極めて悪いほうだし、思ったことをちゃんと言わなきゃバチが当たる、ってのは変だけど、なんというか思ったとおりに口を開くのは一種の宗教的信条みたいなもんだから、社交辞令のボキャブラリーはあまり豊富ではない。
そのせいか女性から、特に新入社員の若い女性からは冷たいとか怖いとか言われる。
僕はごくニュートラルの対応しているだけだから、こういうのを冷たいとか何とか言う奴は、多分いままで相当に甘やかされてきたんだろうなと思う。
同時に、本心でコミュニケーションをとった経験が乏しいのかもな、とも思ってしまう。

今日のK君を見て、久しぶりに波長の合う男を見た気になった。
うむ、それでいい。それで君を煙たがる奴は放っておけばいいんだ。

来週も気合入れてこいよな。
ラベル: 受験生
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2007年07月16日

お金を取るのが予備校だから。

仕事終わって、溜まり場になってる非常階段で数学の講師と話していると、H君の話題になった。

H君はいわゆる不登校だが、一般的な不登校生徒のイメージとはずいぶんかけ離れた、そういう意味でやや変わった生徒だ。
礼儀正しくて、目標をしっかり持っていて、明るくて、知的だ。
僕は以前フリースクールで働いていたことがあったから、不登校生徒にはこのような変わり者がしばしばいることを体験して知っている。

しかし数学講師のAさんはややびっくりしたついでに興味を持ってしまい、ずいぶんH君に肩入れしているようだ。
Aさんは、経歴こそよく分からないが、とにかく熱心を絵にかいたような人。能力もあって、現状理数系講師が不足しているため、管理職はAさんのわがままをかなりの程度容認している。辞められたら困るからね。

で、そのわがままというのが、ようするに決められたことをやったら、そとは好きにやらせてくれ、ってことらしい。
ここの「好きなこと」というのは、「気に入った生徒に、付きっ切りで指導する」ということ。報酬はいらないから、だそうだ。

管理者としては断る理由はないわけで。

ウチの弱小予備校は契約の基本として基本教科の一斉授業があり、それに付随する形でいろんなオプションを用意している。たとえば夏期講習とか。
そのオプションの中に「個別指導」がある。1時間いくら、みたいにしてあくまで通常契約以外にお金を頂いて契約していただく。

講師のAさんは、とにかく好きにやっていいわけだから、もうH君につきっきりなわけ。
「今日は4時間やりました!もう教えた範囲ならばセンター満点ですよ、わはは」

うむ。慶賀にたえない。

僕は昨年卒業していったある生徒を思い出しながら聞いていた。

Kさん。母子家庭の女子生徒。ほかの生徒みたいにブランド品なんかもってないし化粧も濃くはないけど、ビンボーくさくならないようにいろいろ努力していたようだ。
僕はこの生徒の担当だったのでしばしば二人で話をする機会があったんだけど、あるとき彼女が個別指導を希望してきた。
僕は担当として契約のことを説明し、およそのコストを出した。
僕ら講師の役目はここまで。生徒からこういう話があった場合は契約担当、早い話が営業職員だけど、そういう部署に報告することになっている。

この話の直前に、母親が倒れて収入がグッと減ってしまったとの話を聞いていたので、生徒にはこれから契約の話をそういう担当の人とすることになるけど、よーく考えてから返事するよう伝えた。

数日後営業マンが「いやあありがとうございました。○○万上がりましたよお」って言ってきた。

お母さんは一体どこからお金を出してきたんだろう。
おしゃべりなお母さんだったから、僕もいろいろ知ってしまっていたので、かなり無理な捻出の仕方だったことは容易に分かった。

彼女は不運もあって第1志望に落ち、滑り止めでも惨敗し、当初予定していもいなかった大学の2次募集を受け、ようやく受験を終えた。
合格の報告にはきてくれた。

馬鹿な僕は聞いた。「そこ行くの?」
彼女は「多分無理」とだけ言った。経済的に無理、と言いいたかったのをギリギリのプライドが止めたようだった。

僕らは「教育産業」とやらで働いているし、何かのアンケートで職業の選択肢にその名があれば躊躇なくそれを選ぶ。
僕らは出所不明のお金であろうと、生徒とその親が差し出したお金を分け合って生活しているわけだ。そういう仕組みだ。

無料サービスはその秩序を壊してしまう。
Aさんの行為は善行だろうが、僕らのルールにはなじまない。

そういう仕事だ。
ラベル: 教育 予備校
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2007年07月14日

教職とる!なんてカテゴリ…

恥ずかしいことに、まったく勉強する気が起こらない。
生徒にもあんまりうるさく言うほうじゃないけど。

このままじゃどうしょうもないことは分かってんだけどなあ。
ぶっちゃけ教師になるのにやや不安が出てきた。

教育産業の延長として学校の教師を捉えているフシがあるわけで。
なんか違うだろそれって思いと、何が違うのかね?な思い。

勉強ができるやつってのはもう高校の時点で決まってんだよね。うちの生徒を見てると中学ではまだ何も分からないという印象。有名私立中学ってのは本当に何も当てにならない。
でも高校は違うんだ。
その学校で上位なら旧帝国大学は当たり前。あとは学部次第、みたいなところもあれば、有名校なのに校内で並外れてできるやつだけが奇跡で私立の医学部、とかね。後者はお嬢ちゃん学校のほとんど。

前者は基礎的なクラスでも真剣に授業受けてるわけだ。僕はガミガミ言うほうではないが、要求するところは非常に高い。基礎的なクラスのテキストだっていくらでも難しくすることはできるから。特に英文法を厳密に適用させることを求めればほとんどのレベルの生徒が困ってしまうわけで。現役だから『解釈教室』をつぶしたやつなんてそんなにいないし。

一方後者はというと、学力や努力の割りに優等生オーラばかり活発で手に負えない。一番ムズいクラスしか受けないが、あまり理解できず、決して安いとはいえないウチの授業料に加え、個別指導まで追加契約したりする。いいお客さんなんだけど…これで実力がつくかというとなあ。
そうだ。気になってたことを思い出した。それは、女はなんでこんなにゼイタクさせてもらってんだろう。男と比べると明らかにカネのかかり方が違う。契約書チェックすれば如実にその差は現れるわけで。留学経験があるのも女子生徒ばかり。
営業の人に言わせると、ウチみたいな小規模予備校を選択するのはどっちかというと女子生徒が多いそうだ。きめの細かさとかを求めてくるんだそうで。
ほかにも着るものとか、買い物してる場所とか。男との会話で百貨店の名前が出てくることなんてないもんなあ。

物質的に不相応なまでに豊かな環境で「がんばる」のと、雑草みたいにほったらかされて「がんばる」のとでは、その後の人生が描く軌跡に大きな違いが出そうに思えてならない。

新しい教育基本法が施行されて浸透すれば、塾業界は今まで以上に稼ぎにくくなる。学校の課題が多すぎて塾にかよう物理的な条件が損なわれるからね。相対的には学力面における学校の重要性が増してくるわけで、つまり保護者は学校に塾のような機能を求めてくることになりそうだ。
しかしこれが単に成績至上主義を求める、なんて小さなことにとどまらないかもしれない、と思う。
簡単に言うと、サービス産業のお客様として振舞う権利を要求してくるということのような気がする。いわゆるモンスターペアレントの問題をまったく解決せずにきてしまったのは、まことにタイミングが悪かった。
それまで学校が持っていたとされ、また破壊されたとされて久しい社会的機能、僕なりに言えば、成人するための通過儀礼として理不尽な強制や苦痛を与える修行の場としての機能を、学校は今後完全に喪失してしまうんだろうな。

公立のトップ校、ほんの一握りのトップ校の生徒だけが野太く実力をつけ、そのたの有象無象は汗ひとつかかずに社会に出てゆく。多分そのころには他者に対する敬意や感謝などはすっかり忘れ、または教育されておらず、一方親譲りのクレーム技術と自分の感情のアクセルだけは研ぎ澄まされているはずだ。

教育の意義って何だ?

そんなの教師になってから考えろ、と。

はい。
ラベル:教職 通信教育
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2007年07月09日

今日のお仕事

系列校舎に出張して授業3つ。
予習不足が否めないリスニングはなんとかいつも通りこなした、という感じ。SHADOWINGを自分なりに簡単にアレンジして生徒にやらせてるんだけど、今日はスクリプトを見ずに発声(発音ではない)している生徒が何人かいた。基礎的な英語力が著しく不足している生徒が多いもんだからあんまり高いレベルのことは求めないんだけど、中には英語の好きなのもいて、いろいろ工夫しながらやろうとしている。

じんわりとうれしかった。

残り二つは高校標準レベルの英文法。関係詞の第1回。じっくり丁寧に、を心がけて。連鎖関係代名詞なんていうおどろおどろしい文法にもよく付いてきてくれた。「このI thinkは単なる挿入!」なんて手軽に済ませる講師じゃなくて気の毒だったが、今日のみんなは本当によく集中してがんばってたなあ。

僕は古典的な?構文分析型の授業しかしないからいきおい文法用語がじゃんじゃん登場することになって、そういうのをevilだとどこかで教わった人には非常に評判が悪い。で、そういうのに限って「英語を英語のまま理解する」なんておっしゃるわけで。

おのれはネイティブか?

僕は英語という教科の目的はなにもアメリカ人のそっくりさんを作ることにあるんじゃないと考えている。
英文法という割とシンプルな論理法則を、実際の英文に当てはめることで、論理的思考力をトレーニングするもんだと考える。
よくある教室設例だけど、

  Time flies like an arrow.

を説明した後で、

  Fruit flies like a banana.

の訳を考えるみたいな。ここで「果物はバナナのように飛ぶ」、とひとまず回答してみるところからはじまるんだ。で、おかしいぞと。述語動詞をfliesにしたところが違うんじゃないか?とかいうふうに進んでいってもらいたい。
この違和感は決してネイティブのそれではないんだと思う。きちんと英文法のあてはめをやって、日本人の頭で意味を考えたからこそ出来した違和感なんだ。

教室設例で思い出した。今日授業が終わってから質問された文にこういうのがあった。

  Rich as he is, he looks happy.

ある有名予備校講師の書いた本に出てくるんだそうだけど、ちょっと首をひねりたくなってしまった。
いいたいことはわかる。
つまり、こういう文を目にしたとき「接続詞のasのうち、譲歩または逆接の意味になるやつだ!このときは補語が文頭に出るんだ。『彼は裕福なのに』ってね」などと早計してはならないってことでしょ?

で、この副詞節の部分は単なる分詞構文として読め、と。asの節は分詞構文でよくでてくるアレだよ、と。あとは、分詞構文なんだから接続詞は好きなように補って考えなさい、と。たとえばbecauseとかさ。
そうすれば『彼は裕福なので、幸せそうだ。』となってめでたいねえ、と。

これも、論理を鍛える目的には資すると思いますけど。でも、いかにも自分の土俵に引っ張り込む目的だけの創作英文じゃないかって気がしてならない。

なんかいやらしいなあ。本当にこんな英文あるのかな。
質問してきた生徒は、譲歩または逆接のasさえ知らなかったから、まずはこっちのほうが100倍大事だと言っておきましたが。

そんな変なのよりコレじっくり読めよな。↓

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2007年07月08日

がんばれOさん

土曜日は休日。わが弱小予備校は年中無休OPENなため、全職員がきわめて複雑なシフトを組み休日を取っている。
昨日夜遅く最後の授業を終え、残務整理をしているとどうしてもやらなきゃならない事務仕事がみつかりやがった。

「Oさんに頼もう♪」

Oさんは僕より2つ年上の英語講師。責任感・指導力・生徒とのコミュニケーション能力、どれをとっても有能極まりない人だ。きっとやってくれよう。

「Oさん。悪いけど明日コレ…」
「あ、僕臨時で休むんですよ。」

即答。

そうか。採用試験受けに行くのね。遠いところだから前日から入っておくわけだ。

僕が教職に目覚めたのはこの人の影響が大きい。お互いに20代をあまりに奔放に生きてしまったためなんとなく損をしている気がする、というところから始まって共感するところが多かったためよくしゃべる間柄になった。同じ英語科講師だし。

いつかの送別会。あまり歓迎されていなかった社員の一人がやめる、ってことで主役そっちのけで教職話で盛り上がってみた。会社の景気は限界まで悪化している折だったから、「このままここにいてもなあ…」と内心思っている輩はみんな乗ってきたわけ。

「ここにいるみんなが高校の教師になって、5年後くらいにまた飲めたらいいね」なんて、管理職のいる前でいうセリフじゃないけれど。フツーのサラリーマンの作法としては。

塾業界には教職免許を持っている人が少なくない。授業だけに集中していられるところに魅力を感じているか、逆に学校にありがちな煩瑣な業務に嫌気が差してやむなくこっちの世界にいるかはそれぞれだけど。

ただですねえ…

はっきりいって前者は甘い。授業だけで食える人はこれからどんどん減っていきますよ。資金的なことをはじめとして企業としての体力に恵まれてる大手にしてからすでにそんな状況になって久しいわけで。いわゆるSKYに知り合いがいるけど、はっきりいって生活ができてるのが不思議なくらいだ。ほんの一部の講師は除くけど。好きだから苦にならない、という感じか。

後者は結局塾独特の業務に忙殺されてしまうことになるから、教員やってても同じだったよ、なんてことになりがちだ。むしろ弱小予備校は経営が不安定だから、その点だけは学校に軍配が上がる。

で、Oさん。前職はこのあたりでは有名なスパルタ式の中学塾でバリバリやってたひと。どっちか言うと成績とか偏差値とかを重視している人のように見受けたからちょっと聞いてみた。

「いわゆる底辺校ってありますね。そういうとこに赴任したらどうします?」
「勉強以外のことを教えられたらいいんじゃないですかね?」
「なるほど。でもそういう教育が困難な生徒に限って中退しがちですよね。それで教師として何かを教えたことになるんだろうか」
「それはわからない。でも彼のあたまのどこか隅っこにでも僕の言葉が残っていればそれでいいよ。自己満足だろうけど」

うむ。納得。

明日試験か。
がんばってくださいよ。あんたは教師にならなきゃ。

僕はまだ通信のレポート、ひとつもやってないけど。
さらに明日のリスニングの授業の予習もやってないけど…
posted by vice_versa at 02:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 教職取る! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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