2007年07月16日

お金を取るのが予備校だから。

仕事終わって、溜まり場になってる非常階段で数学の講師と話していると、H君の話題になった。

H君はいわゆる不登校だが、一般的な不登校生徒のイメージとはずいぶんかけ離れた、そういう意味でやや変わった生徒だ。
礼儀正しくて、目標をしっかり持っていて、明るくて、知的だ。
僕は以前フリースクールで働いていたことがあったから、不登校生徒にはこのような変わり者がしばしばいることを体験して知っている。

しかし数学講師のAさんはややびっくりしたついでに興味を持ってしまい、ずいぶんH君に肩入れしているようだ。
Aさんは、経歴こそよく分からないが、とにかく熱心を絵にかいたような人。能力もあって、現状理数系講師が不足しているため、管理職はAさんのわがままをかなりの程度容認している。辞められたら困るからね。

で、そのわがままというのが、ようするに決められたことをやったら、そとは好きにやらせてくれ、ってことらしい。
ここの「好きなこと」というのは、「気に入った生徒に、付きっ切りで指導する」ということ。報酬はいらないから、だそうだ。

管理者としては断る理由はないわけで。

ウチの弱小予備校は契約の基本として基本教科の一斉授業があり、それに付随する形でいろんなオプションを用意している。たとえば夏期講習とか。
そのオプションの中に「個別指導」がある。1時間いくら、みたいにしてあくまで通常契約以外にお金を頂いて契約していただく。

講師のAさんは、とにかく好きにやっていいわけだから、もうH君につきっきりなわけ。
「今日は4時間やりました!もう教えた範囲ならばセンター満点ですよ、わはは」

うむ。慶賀にたえない。

僕は昨年卒業していったある生徒を思い出しながら聞いていた。

Kさん。母子家庭の女子生徒。ほかの生徒みたいにブランド品なんかもってないし化粧も濃くはないけど、ビンボーくさくならないようにいろいろ努力していたようだ。
僕はこの生徒の担当だったのでしばしば二人で話をする機会があったんだけど、あるとき彼女が個別指導を希望してきた。
僕は担当として契約のことを説明し、およそのコストを出した。
僕ら講師の役目はここまで。生徒からこういう話があった場合は契約担当、早い話が営業職員だけど、そういう部署に報告することになっている。

この話の直前に、母親が倒れて収入がグッと減ってしまったとの話を聞いていたので、生徒にはこれから契約の話をそういう担当の人とすることになるけど、よーく考えてから返事するよう伝えた。

数日後営業マンが「いやあありがとうございました。○○万上がりましたよお」って言ってきた。

お母さんは一体どこからお金を出してきたんだろう。
おしゃべりなお母さんだったから、僕もいろいろ知ってしまっていたので、かなり無理な捻出の仕方だったことは容易に分かった。

彼女は不運もあって第1志望に落ち、滑り止めでも惨敗し、当初予定していもいなかった大学の2次募集を受け、ようやく受験を終えた。
合格の報告にはきてくれた。

馬鹿な僕は聞いた。「そこ行くの?」
彼女は「多分無理」とだけ言った。経済的に無理、と言いいたかったのをギリギリのプライドが止めたようだった。

僕らは「教育産業」とやらで働いているし、何かのアンケートで職業の選択肢にその名があれば躊躇なくそれを選ぶ。
僕らは出所不明のお金であろうと、生徒とその親が差し出したお金を分け合って生活しているわけだ。そういう仕組みだ。

無料サービスはその秩序を壊してしまう。
Aさんの行為は善行だろうが、僕らのルールにはなじまない。

そういう仕事だ。
タグ: 教育 予備校
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